小川隆夫ONGAKUゼミナール 〜秋に聴くボサノヴァ〜 かぶりつき!イベントレポート

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    秋晴れの連休初日。神戸の街は、ジャズストリートでいつもよりも人通りが多く賑やかでした。南京町を横目にJazz&Cafe M&Mへ。

    今年で3回目となるM&Mでの小川隆夫のONGAKUゼミナール。回を重ねるごとにお客さんが増え、今回は満席のようでした。ボサノヴァ・アーティスト中村善郎さんを迎えて対談とスペシャルライブが用意されていたためでしょう。

    私はぎりぎり滑り込みで会場入りしたのですが、幸運にも小川さんの前、80センチくらいの席へ納まりました。

    司会はTJCのメンバーでもある安田英俊さん。ジャズジャーナリストと小川さんを紹介して、さっそくスタート。

    まず、第一部は小川さんによる、ボサノヴァの来歴解説。どのようにブラジルで生み出されたのか、ジャズとどのような関係にあるのかを説明されました。

    ボサノヴァの誕生は1950年代、当時ブラジルが一時的に民生時代でした。当時はヴァルガス大統領の時代、ブラジルの基礎ができたといわれるころです。

    1956年ごろナラ・レオンの自宅サロンに外交官で詩人のヴィニシウス・ジ・モラエス、ジョアン・ジルベルトやアントニオ・カルロス・ジョビンらが集まり、ブラジルのサンバに、アメリカのクールジャズのテイストを取り入れて作ったそうです。

    そして、CDから曲をエピソードを交えてご紹介。まず「シェガ・ジ・サウダージ(想いあふれて)」。この曲はボサノヴァ第一号の曲と言われています。最初にこの曲を録音したエリゼッチ・カルドーゾと、本家のジョアン・ジルベルトのバージョンを聞き比べました。

    そして、アントニオ・カルロス・ジョビン「イパネマの娘」。言わずとしれた、ボサノヴァの代表曲ですが、ジョビンとモラエスが海岸近くのバーで見かけた実在の少女のことを題材に曲にしたそうです。

    その他に、スタン・ゲッツ&ジョアン・ジルベルト「コルコヴァード」
    アストラッド・ジルベルト「ハウ・インセンシティブ」
    ルイス・ボンファ「カーニヴァルの朝」
    ワルター・ワンダレイ「おいしい水」
    を紹介されました。

    小川さんは、ボサノヴァにあう楽器として、ギターの他に、トロンボーン、フルート、オルガンを挙げましたが、紹介された曲の中では「おいしい水」のワルター・ワンダレイのオルガンがなんともリリカルでいい感じでした。

    第二部は小川さんと中村さんのトーク。中村さんは、スニーカーにTシャツという、リラックスしたいでたちで登場です。

    まず中村さんのボサノヴァとの出会いについて小川さんが尋ねました。中村さんは大学時代、特に当時の音楽には関心はなく、ギターも弾ける程度だったそうです。ところが、オイルショックのあおりを受けて大学卒業後は就職難のさなか。そこでブラジルにバックパッカーで旅行に出かけ、旅先のバールでミュージシャンたちに出会い、ボサノヴァの手ほどきをうけたのが始まりだったそうです。

    ボサノヴァの特徴は、聞き手を自分のほうに引きつけるようなスタンス。演奏時は通常緊張で呼吸が浅くなることが多いのですが、ブラジルのボサノヴァ・アーティストは息が深く、長い。それはあくまで自分の世界の中の音楽に相手をひきつけるように演奏するからだと中村さんは言います。
     
    第三部はお待ちかね、中村さんの演奏は「サマー・サンバ」でスタート。まったくの生で歌われました。ギターはつま弾くように、歌はささやくように。外は夕暮れ、半分空いたカフェの窓の外からはかすかな風が入るだけで、街の喧騒は遠くに聞こえます。静まり返った中で、会場はたちまちブラジルの匂いに包まれました。

    スタンダードナンバーはもちろんなのですが、中村さんオリジナル曲「大地」の演奏も、少しエッジが効いていて聴きものでした。アンコール1曲もあり、予定時間をこえてたっぷり演奏していただきました。

    そして最後は質問タイム。スタン・ゲッツが一時期、ボサノヴァを演奏しなくなった背景についての質問が出されました。小川さんいわく、スタン・ゲッツはなかなかに商売っ気があり、ボサノヴァで一気に人気がでてギャラも高くなったが、相変わらずボサノヴァを演奏できるのは小さいライブハウスしかなかった。でも、それだと高いギャラを取れなくて、演奏しなくなったというのが真相だそうです。


    予定時間を30分近くオーバーして、ようやく終了。私は帰り際に、中村さんにひとつ質問してみました。日本では、ボサノヴァが夏の風物詩のように扱われていますが、どうとらえますか、と。するとブラジルでは冬の方がよく聞かれる、とのお答えでした。ブラジルでは夏はにぎやかなサンバの方が好まれるようです。日本でのこのイメージは「イパネマに娘」の大ヒットの影響、とのこと。なるほど、ヒットも考えものだと思いました。

    ボサノヴァを鼻歌に、秋深まるとっぷりの夕闇の中、南京町の赤いランタンを横目に会場を後にしました。


    (筆:奈良 Photo:しろくま)




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